高級腕時計ブランドは古くからいろんな戦略で、知名度を高めてきました。その一つとして、誰もが憧れるロックスターやスポーツ選手、俳優などの人物に、自社の腕時計を着けてもらい、ブランドの象徴(アイコン)として、広めてもらうというのがあります。
この記事では有名な腕時計メーカーの象徴(アイコン)を紹介していきます。
ロレックス=ロジャー・フェデラー
世界で最も有名な時計ブランド、ロレックスとテニス界史上最高の選手との呼び声高いロジャー・フェデラーがスポンサー契約を結んだのは、2006年のこと。
高級腕時計のブランドとしてもかなり長い期間契約を結んでいます。
フェデラーはスイスのバーゼル出身であり、プロテニス選手としての戦績も申し分ないことから、現在ロレックスとしては最高位のアンバサダーです。
ロレックスのスポンサードしているメンバーを見てみるとわかりますが、フェデラーは常に最前列に並べられて紹介されています。
デイトジャストⅡ Ref.116334は、フェデラーがピートサンプラスの持つグランドスラム優勝回数歴代最多記録を抜いた際に表彰式で着けたモデルです。
これまで数々のロレックスウォッチを身に着けてきましたが、この腕時計はフェデラーにとって象徴的なモデルと言っても良いでしょう。
今後、ジョコビッチに記録を抜かれるようなことがなければ、ずっとロレックスはフェデラーと繋がりを切らさないでしょう。フェデラーが普段愛用するモデルや、グランドスラムの表彰式で着けたモデルは下記記事にまとめてあります。
リシャールミル=ラファエル・ナダル
こちらもテニス界の雄、ラファエル・ナダル。リシャールミルはロレックスとは対照的なブランドで、常に最先端の技術や素材を駆使し、軽量で、耐久性の高い腕時計を造り続けています。
最安モデルでも1000万円を優に超える値段設定もあって、腕時計界のF1と呼ばれています。
これまで、ラファエル・ナダルモデルは数多く作られてきました。人気の高いのはナダルも好む、黄色やオレンジ色を取り入れたモデルです。
ほとんどのモデルに重力を無効化する「トゥールビヨン」という複雑機構が搭載されており、価格も1億円を超えるようなものばかりです。
一般の人にはなかなか手が出せないですね。
リシャールミルはかなり手広くアンバサダー契約を結んでいます。衝撃に強いモデルをうたうためか、レーサーやプロゴルファー、テニス選手などが多いですね。
ちなみに専用モデルはありませんが、日本人も何人かいますよ。
ブレゲ=マリー・アントワネット
1775年創業のブレゲは、歴史が長すぎるためか、アイコンとなる人物はもはや歴史上の人物です。最も有名なのはマリーアントワネット。
フランス国王ルイ16世の王妃であり、フランスの資本主義革命「フランス革命」で処刑された彼女の注文した懐中時計は世界最高峰の複雑機構を搭載し、贅を尽くされたものとなっています。
彼女がブレゲの時計にほれ込み、数多くの注文をしたのは間違いありません。しかし、このマリーアントワネットと呼ばれる懐中時計は彼女本人が注文したわけではありません。
1783年、ケ・ド・ロルロージュの工房に王妃の礼賛者という謎の人物が訪れ、 当時のあらゆる時計技術の粋を凝らした最高の時計を彼女への贈り物として注文しました。注文は、できるかぎり部品にゴールドを使用し、さまざまな種類の複雑機構を数多く搭載してほしいという内容でした。
この懐中時計が完成する前にマリーアントワネットは処刑されてしまい、ブレゲ本人も亡くなります。この後、ブレゲの弟子たちによって、合計44年の歳月を経て完成します。
歴史の長いブレゲならではのエピソードですよね。
ナポレオンもブレゲの顧客として有名な歴史上の人物の一人です。遠征先などではブレゲの置時計を置いて時間を見ていたのでしょうか?
ブレゲは設立時から顧客名を台帳に書き続けています。ブレゲの腕時計を買うと、この歴史上の人物たちと名前が並ぶと考えただけでも一本は欲しくなりますね。
パネライ=シルヴェスタ・スタローン
一番これがわかりやすいかと。ランボーで有名なハリウッド俳優、シルヴェスタ・スタローンです。
パネライは一般に知られるようになってからは意外と歴史が浅く、1993年に民政化しました。
当時、イタリアを旅行していたシルヴェスタ・スタローンの目に留まり、自身のニックネームを着けたモデルの制作をパネライに依頼します。
それがこのスライテックです。「スライ」は彼のニックネームで、映画にこのモデルを着用して出演するようになります。筋肉隆々の腕にはパネライがよく似合い、後にデカ厚ブームという流行さえ生み出しました。
また、パネライといえばこの男。ジェイソンステイサムです。映画「トランスポーター」ではパネライのモデルを3部作で続けて着用し、認知度はかなり高くなったと思います。
キレッキレのアクションにBMW、そしてアウディ。その腕にはパネライ。良い男の持ち物とは何なのかを教えてくれた映画でした。
オメガ=ジェームズ・ボンド
映画と密接にスポンサードされている腕時計ブランドといえばオメガと007ですよね。
もうかなり長い間、ジェームズ・ボンドはオメガのシーマスターを着けてミッションに挑んでいます。
近年は007モデルも映画公開に合わせて発表され、ファンのみならず注目度はかなり高いものとなっています。
今作、「ノータイムトゥダイ」で出てくるシーマスターは限定品ではなく、常駐品ということで、多くの人の手に渡るようです。
ハミルトン=エルビス・プレスリー
ハミルトンにとってのエルビス・プレスリーもなくてはならないブランドアイコンです。
エルビス・プレスリーが生前気に入っていたモデルがハミルトンのベンチュラ。三角形のケースと世界で初めて電池を使って動いた腕時計として有名なモデル。
エルビス・プレスリーが愛用したモデルはスタンダードなものですが、エルビスをイメージして造られたベンチュラ80というモデルもあります。
ベンチュラはこのほかに、映画『M.I.B』でもエージェントが着用していることで有名です。
タグホイヤー=アイルトン・セナ
音速の貴公子と呼ばれ、1980年代後半~90年代前半にかけて数々のF1レースの表彰台を総なめにし、ワールドチャンピオンを3度獲得したアイルトン・セナ。
F1レーサーと言えばまず名前が上がります。
アイルトン・セナは1994年代3戦サンマリノGPで34歳の若さで衝突事故によりこの世を去りますが、今もなお彼のオマージュモデルを作り続けているブランドがタグホイヤーです。
現在でも数々のモデルに「SENNA」の名を冠し、彼への敬意を表し続けています。モーターレースと関りの深いタグホイヤーならではだと思います。
もちろん生前からアイルトン・セナはタグホイヤーの腕時計を着けていました。左腕にはタグホイヤーのヒット作である「リンク」のベルトが見えます。
その死から20年以上が経過しますが、今後もこの関係性は変わらないのではないでしょうか?
タグホイヤーは色んなものにスポンサードしてますが、アイルトン・セナはアイコンであり続けると思います。
アイコン(象徴)の移り変わり
ブランドによってアイコン(象徴)は様々です。その時代において力を持った人を追い続けるブランドもあれば、故人やレジェンドと言われる人を起用し続けたりと、スポンサードの仕方はそれぞれです。
その分、ロレックスは昔からかなりスポンサードはうまかったと感じます。エクスプローラー1とエベレスト登頂、深海とサブマリーナ、モーターレースとデイトナなど、変わりようのない、挑戦し続けることができる事象を長い間起用しています。フェデラーが引退した後は、誰を最前列のアイコンに持ってくるのかが気になります。
ブライトリングはけっこうコロコロ変わるイメージです。デイビット・ベッカムから最近ではブラッドピットですよね。ブラピなんかロレックスやタグホイヤーのイメージもあります。
タグホイヤーに捨てられたタイガーウッズは、現在ロレックスファミリーに名を連ねてます。
パテックフィリップ、オーデマ・ピゲなどの格式高い時計ブランドはそんなもん関係ないぜ!と言わんばかりに「人物」にはあまりフォーカスしません。
こうやって見てみるとなかなか面白いものです。
それでも、007役のダニエルクレイグやパネライを有名にしたジェイソンステイサムは、プライベートではアンティークのロレックスばかり愛用しているというのも皮肉なものです。
今後のブランド戦略の見方も、アイコン(象徴)から見てみると楽しめるのではないでしょうか。