時計の歴史を200年早めた時計師、アブラアン-ルイ・ブレゲ。彼の発明を見ればそれも納得します。彼は史上最高の時計師とされています。サッカーで言えばペレやリオネル・メッシですね。この記事ではBREGUETの発明と、その発明を味わえる現代のブレゲウォッチを紹介していきます。
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Breguet(ブレゲ)の発明
発明したものは、革新的な複雑機構から今日存在する時計の基本的なもの、ブレゲ針や数字、ギョーシェ彫の文字盤やコインエッジなどデザインについてのことなど多岐にわたります。
そしてそのどれもが使う人のことを考えてのものというのが特徴です。
⓵自動巻き(ペルペチュアル)
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キーやその他の外的作用の助けを必要としない、自ら巻き上げる時計、自動巻きの時計。ブレゲの代表的な最初の発明です。回転するアームの上でバネ付きのローターが上下に動くことで、ゼンマイを巻き上げます。彼の最初の自動巻時計「ペルペチュエル」は、1780年、オルレアン公に販売されました。
アブラアン-ルイ・ブレゲは、1787年から1823年にかけて約80本の「ペルペチュエル」を製造・販売したとされています。
現代の自動巻腕時計には回転式のローターが用いられています。現在では当たり前の機構ですが、当時は革新的な機構でした。
⓶ブレゲ針、ブレゲ数字
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1780代の針の多くは、短く、太く、そして装飾が過度に施されていたため、全体に重厚な印象を与え、文字盤の読み取りは容易ではありませんでした。ブレゲは機構だけでなく、デザインにも合理化を図っていきます。
穴の開いたリンゴ、あるいは三日月と様々に形容されるこの針は、先端部にオープンワークが施された斬新なデザインのものでした。スリムですっきりとした形にこの上ないエレガンスを備えた新しい針は、当時瞬く間に成功を収めました。
ブレゲ針、ブレゲ数字はBreguetの時計だけではなく、現在も多くのメーカーが採用しています。
もちろんBreguetの腕時計の多くがこのブレゲ針を採用しており、今日のブレゲウォッチのアイデンティティとなっていることは言うまでもありません。
⓷ゴング機能
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現在のアラーム機能であるゴング機能。
17世紀末、当時の優れた時計職人たちは、必要に応じて暗闇の中で音を鳴らして時刻を知ることができる時計を作るべく、才能と創意を競っていました。1680年頃、最初のリピーターウォッチが誕生すると、それ以降、多くの時計職人たちがこの複雑な機構の開発に情熱を注ぎ、その精度も15分単位から分単位へと磨かれていきました。
アブラアン-ルイ・ブレゲはそれまで使われていた鐘の代わりに、板バネの上で音を鳴らす最初のリピーターウォッチを作りました。直線的な形状で、後方の地板に対して交差するように置かれた板バネは、ムーブメントを取り巻くように配置されました。板バネのメリットは、より繊細でよりハーモニー豊かな音色を出しつつも、リピーターウォッチの厚みを大幅に減らしたことにありました。
⓸均時差
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均時差とは、平均太陽時(1年を通し1日を24時間で区切った時間)と真太陽時(地球が太陽のまわりを回る軌道が完全な円ではなく楕円のため、太陽の南中から次の南中までの時間は一定ではない)の差です。
遥か昔から太陽は、時間計測の基準であり続けてきました。しかしながら、太陽の目に見える軌道(日時計に表示される真太陽時)は一定ではありません。
均時差とは、平均太陽時(1年を通し1日を24時間で区切った時間)と真太陽時(地球が太陽のまわりを回る軌道が完全な円ではなく楕円のため、太陽の南中から次の南中までの時間は一定ではない)の差です。例えば11月3日には平均太陽時は真太陽時に比べて最大で16分の遅れを見せ、一方2月12日には最大で14分早く進むなどといったずれが生じます。この2つの時間の差が0になる日は1年でたったの4日しかありません。
1815年に「フランス海軍御用達クロノメーター製造者」に任命されたアブラアン-ルイ・ブレゲと彼の息子は、当時最も精巧な均時差表示を備えたモデルの数々を生み出しました。
⓹パラシュート
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受け皿状の部品を、バネを配した台に載せ、テンプの軸を効率的に守るパラシュートは、現代のインカブロック機構およびあらゆる衝撃吸収装置の元祖です。
パラシュートの名前で知られる耐衝撃吸収機構はブレゲの最も有名な発明のひとつです。テンプの軸は極めて細いため、時計が衝撃を受けた時に軸は致命的な損傷を受けることになる…そうした観察を起点として、彼ははそれを防ぐ方法を考案しました。
テンプの軸の先端を円錐にカットし、この形に合った受け皿状の部品で支える。そしてそれらをバネを配した台に載せてはどうだろうか。彼がこの発明を実際に試し始めたのは1790年頃。この発明によりブレゲの時計はこの上なく強固になり、その名声もさらに高まりました。
1792年以降の「ペルペチュエル」には全てこの機構が採用されるようになり、他の全てのモデルにも順次採用されて行き、1806年の全国博覧会で完成品が展示されました。耐衝撃吸収機構としても知られるこのパラシュートは、現代のインカブロック機構およびすべての耐衝撃機構の元祖であるといえます。
⓺パーペチュアルカレンダー
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複雑機構の代名詞ともいえるパーペチュアルカレンダー。高級機械式腕時計ブランドはどこもしのぎを削ってこの機能を搭載したモデルを開発しています。閏年の2月29日を含む、異なる月の長さを考慮し、自動的に修正する機能を持つカレンダーをパーペチュアル・カレンダーと呼びます。
この機能を備えた腕時計や置時計は、曜日、日付、月など暦に関する情報を表示させます。閏年の2月29日を含む、異なる月の長さを考慮し、自動的に修正する機能を持つカレンダーをパーペチュアル・カレンダーと呼びます。
共和暦は1793年10月24日、グレゴリオ暦に代わって導入されました。その結果、時計職人たちは、古いグレゴリオ暦から共和暦への変換表を時計に取り付けました。
⓻ブレゲひげゼンマイ
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最も大きな革命を起こしたブレゲの発明といえるでしょう。ひげゼンマイとは小さなゼンマイで、その伸縮を通じてテンプの振動を調速します。内側の先端はテンプの軸に、外端はテンプ受けに取り付けられています。オランダの数学者ホイヘンスが1675年に発明した平ひげゼンマイは、ある程度の等時性を確立したものの、完璧とは言い難いものでした。平ひげゼンマイは、銅または鉄製で、わずか数巻きの渦巻き状でした。しかし、不完全ではあるものの、平ひげゼンマイは振り子時計と同程度の精度をテンプにもたらしました。
1795年、アブラアン-ルイ・ブレゲは、ゼンマイの巻きの最後の端を持ち上げ、より小さなカーブにすることで、ひげゼンマイが同心円状に展開することを可能にし、この問題を解決しました。
このように「ブレゲ・オーバーコイル」を備えたひげゼンマイは、これ以降、同心円の形状を取るようになりました。時計の精度は高まり、テン輪の中心軸の摩耗速度もこれまでより緩やかになりました。また、2種類の金属から成るバイメタル素材を用いて温度変化に対して自己補正するひげゼンマイも完成させました。
ブレゲひげゼンマイは、すべての高級時計製造会社が採用し、現在もなお高精度のタイムピースに搭載されています。1880年から1910年まで、多くのマニュファクチュールが時計の中蓋に大きな文字で"Spiral Breguet"または"Breguet overcoil"といった刻印を施していました。
ブレゲではさらに高耐久なシリコン製のひげゼンマイを開発。多くのモデルに投入されています。
⓼トゥールビヨン
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腕時計の機構の中でも最も美しい機構。
1801年6月26日、アブラアン-ルイ・ブレゲは、「トゥールビヨン」と呼ばれる新しいタイプの調節機構の10年間の特許権を取得しました。重力こそ時計ムーブメントの規則性の敵であるという観察の基に作業を行っていました。装着時の腕時計の姿勢が変わるごとに、重力によって計時の調整に変化が生じると考えていたのです。
人類のあらゆる活動に付き物のこの重力の問題を解決するべく、時計製造の巨匠は、1分間で1回転する可動キャリッジの内部に、脱進機全体(つまり、テンプとゼンマイ、レバーとガンギ車、最も重力の影響を受けやすい部品)を格納するという発想を思いつきました。こうして、すべての不具合は規則的に繰り返されるために相互に相殺し合うこととなり、さらには、軸受内でテンプが回転することによって接点が持続的に変化することで、注油も改善されました。
時計製造の進歩に伴い、より古典的な方法によって規則性が著しく進化してきたにも関わらず、1801年に特許が取得されたトゥールビヨンは今なお偉大な発明であり、ブレゲのキャリアにとっても、天文学や社会学との連携においても、大きな1つの節目となりました。また、歴史的にも欧州の思想体系の重要な時期に影響を及ぼしました。
⓽世界で最初の腕時計
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皮肉なことに、ブレゲの最も輝かしい革新の一つであり、紛れもなく最も実用的な腕時計は、当時の人々には認知されませんでした。しかし、ブレゲが、1810年6月8日にナポリ王妃から依頼された注文に応え、これまでに知られている初めての腕時計であるNo.2639を考案し、製作したことを証明する製造台帳が確かに残っています。
1808年から1814年にかけて、クロックと腕時計などを34個所有した、美貌の野心家ナポリ王妃は、当然ながらBreguet顧客として最高の地位にありました。
ブレゲの発明した最初の腕時計に捧げるオマージュコレクションがクイーン・オブ・ネイプルズです。
⓾クロノグラフ
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それは、従来の時間と経過時間を同時に表示する時計。現在、クロノグラフの腕時計は絶大な人気を誇っています。時計のムーブメントで作動するクロノグラフのメカニズムは、経過時間の計測の開始と停止をセンターセコンドで表示させます。また、インナーダイヤルでは経過した分を表示させます。ケースバンドに配された2つのプッシュボタンはクロノグラフの作動およびリセットを司ります。
ブレゲは、スプリット・タイム(中間タイム)や同時に動く2者間の秒差を正確に測ることのできる「二重秒針付き、観測用クロノメーター」を1820年に完成させて現代のクロノグラフの先駆者となりました。 1822年には最初のインク印字式クロノグラフ、「ファットン」を彼のもっとも才能あふれる弟子の一人、ファットンとの共同で開発し、販売しました。このクロノグラフは、計測用の秒針が文字盤上で自在に小さなインクの斑点を記すことができ、つまり、文字通り経過時間を記すことができるという製品でした。
のちにこのシステムを完成させたのはルイ-クレマン・ブレゲでした。1821年にパリの時計メーカーのリュセックが同様のシステムで特許を取得していましたが、1850年、インク印字式のクロノグラフが彼の祖父の発明であることを科学アカデミーに証明しました。
多くの時計メーカーに影響を与えるBreguet(ブレゲ)
時計界に最も多くの影響を与えていると言えるブレゲ。もちろんこれらの機構の全てを発案し開発したわけではないでしょうが、それでも多大な貢献を時計界にしてきたと言えます。
現在のブレゲのモデルはどれもそんな初代の考案した伝統を忠実に守っています。そんなところが人気の秘密でしょう。200年前から存在するってだけでロマンを感じますし、魅力的です。
Breguet(ブレゲ)の腕時計を購入するなら
ブレゲの腕時計は世界でもトップクラスの格式のものなので、安いものはありません。最も安いパイロットウォッチでも180万円以上はします。
ただ、並行輸入店を利用すれば、10%~20%ほど安く購入できますし、中古品であれば定価から40%~50%で買えるモデルもあります。
ブレゲはクラシックなモデルが多く、購入する客層も裕福な人が多いです。そのため、何本も高級時計を所有するような時計愛好家が手放した個体ならば、中古品でもいい状態で市場に出てます。
ロレックスやオメガの中古品ならば、かなり傷が多いものやケース痩せした個体もありますが、ブレゲの中古品は割ときれいなものが多い印象です。
価格面も考えれば中古品でもありかもしれません。